月額6ユーロのサーバで動くAI家臣 - Personal AI Agent構築の記録(後編)
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月額6ユーロのサーバで動くAI家臣 - Personal AI Agent構築の記録(後編)

家臣は2体になった

現在、DiscordにはAI家臣が2体住み着いています。

一人目は「竹中ヘル兵衛」。クラウドのGLM 5.3 Flashを頭脳に持つメイン家臣で、日常の窓口です。元ネタはもちろん、竹中半兵衛。今放送中のNHK大河ドラマ豊臣兄弟を見ていて、知将の名前と「ヘルメス」がうまく掛け合わせできると思い採用。

二人目は「黒田クェン兵衛」。こちらは自宅PGXで動くQwen3.8 Flash Nextを頭脳に持つ、完全ローカル運用の家臣です。元ネタはやはり豊臣兄弟に出ている黒田官兵衛。こちらも知将として有名ですね。「Qwen」と掛け合わせできる名前として採用しました。(適当~)

そう、家臣なので口調は常に「殿、〜でございます」。SOUL.mdという人格定義ファイルに、私が意図して書き込んだ設定です(もっとも、その人格設定自体もAIに書かせたのですが)。スマホのDiscordを開いて「ヘル兵衛、明日の天気は」と送れば、「殿、本日の〜でございます」といつでも武士の言葉遣いで答えてきます。AIを従えている感満載です。

ちなみにHermes AgentにはBOTモードというものがあり、複数のAIエージェントを議論させることもできます。スクショでつけたのは、実験的に手持ちの仮想通貨をAI使って10倍に増やせないかなと安易な欲でお題を投げたものですが、過去レートを詳細に分析され、10倍に増やせる確率は1京回に1回で、半値以下になる確率は99%だと、2体からデータを突きつけられ全力でダメだしされた恥ずかしい内容です。

大変優秀な家臣たちですね(笑)。

BOTモードでのヘル兵衛とクェン兵衛。家臣2体で「検討してくれ」に対して各自の見解を出してくれる。

家臣の日常業務

で、この家臣たち、単なるチャット相手だけではありません。

  • 毎朝6:40、東京の天気ブリーフィングがDiscordに届く
  • 毎朝6:45(平日)、都営地下鉄の運行情報が届く
  • 毎朝7:00、Withingsの体重計・血圧計から取得した前日の健康データのレポートが届く
  • 個人で名刺をもらった時にGoogle Driveにスキャンを放り込むと、OCR+AI抽出で名簿化されてObsidianに保存される
  • 「テレビつけて」「エアコン27度で」と頼めば、Home Assistant経由で家電を操作してくれる

完全に「朝、家臣が業務報告を持ってくる侍時代」です。まあ、ぶっちゃけたいした使い方では無いのですが、仕事の場面でも使えるわかりやすいユースケースですね。公開されているAPIとCRONジョブでのスケジューリングで、こんなこともできるよ。という例になるかと。

毎朝6:40に天気、6:45に地下鉄の運行情報が届く。

実は「今の便利さ」だけを狙っていない

ここで少し先の話をさせてください。

Withingsで取っている健康データは、単にレポートで読み流すだけではなく、Obsidianに毎日のデータとして書き込むようにしており、AIがいつでも閲覧できる状態にしてあります。家電もAI経由で制御できる状態にしてあります。これらは、「今できて便利」だけで作っているわけではないんです。

一つは予防医療への期待です。体重・血圧・睡眠といった日々のデータに加えて、人間ドックの健診結果データもAIに渡してあります。日々の健康データ(連続的な変化)と、健診結果(定点での診断)は、同じ体を見ているのに取得のされ方が全く違うデータです。この2つを照らし合わせられるようにしておけば、「日々の生活の変化」と「定点での数値の変動」の因果関係まで、AIが推察できる材料になるのではないかと考えています。検診は年に1回、その場限りの判断になりがちですが、日々のデータが横に繋がれば、体の記録としてはずっと解像度の高いものになります。

もう一つは、Amazon Alexaのようなボイスコマンドデバイスの進化を見据えてのことです。現状のAlexaは、私の環境ではいわば「家電制御のプレースホルダー」に過ぎません。でも、ボイスデバイスが次の世代に進化し、Hermes AgentのようなAI Agentと繋がるようになれば、最初から「AIを通じてデータに触れる・家を制御する」パイプが敷かれている家は、そのまま乗り換えられるわけです。つまり、「AIからデータに触れられる状態・制御できる状態」を普段から作り続けておくこと自体が、次への先行投資だと思っています。便利だから作る、ではなく、作っておくと後で便利になる、という順番です。

Obsidianが「AIと自分の共有データの場所」になった

こうして数ヶ月を経て、一番変化したのはObsidianの立ち位置でした。もともと自分用のメモ帳だったメモアプリが、今はAIと私の共有データ置き場として花開いています。登山の計画、健康データ、ブログの下書き、構築ログ、全部そこにあります。

そして、正直にお伝えすると、もう自分でノートは書いていません。全部AIに書かせています。私は話すか、データを放り込むだけ。整理・要約・ノート化は家臣の仕事です。「第二の脳」とは良く言ったもので、脳みその肉体労働部分を全部委託してしまいました。Googleカレンダーへの予定入力も、AI家臣に依頼して入れるようにしています。

画像も音楽も動画も、全部家臣にお願い

自宅のPGXには、LLM以外にも生成AIのモデルを色々載せています。動画生成の「MiniMax H3」、音楽生成の「MiniMax Music 3」、画像生成の「KREA2 Turbo」、そして音声生成の「Irodori-TTS」(日本語の音声クローン用)。

ただ、1台のマシンのメモリは有限なので、Qwen3.8 Flashとこれらの生成モデルは同時に動かせません。普段はQwen3.8を立ち上げておいて、動画生成などをしたい時だけQwen3.8を停止してComfyUI越しに生成モデルを起動する、という運用にしています。

MiniMax H3やMiniMax Music、KREA2などはComfyUIというツールから使えるようにしているのですが、ComfyUIに指示を出すのって、実はそれなりに知識が要るんですよね。ワークフローのノードをどう繋ぐか、パラメータをどう設定するか。私がこれを全部覚えるのは…もう面倒なので、Hermes Agentに指示を出しています。「こんな感じの画像作って」と話しかけると、裏でAgentがComfyUIにいい感じでプロンプトを入れてくれて、アウトプットだけ私のところに届く。メチャ簡単。もうノードを触りたくない。

そして、実は友達との内輪のバイクツーリング動画やネタ動画作成をする際に、動画・画像・音楽・音声の生成にこれまではそれぞれ年間契約のクラウドサービスにお金を払って使っていました。動画生成と画像生成のDomo AI、音楽生成のSuno AI、音声生成のFish Audio。それらを、すべてPGX上のローカルモデルで代替できてしまったんです。ということは、来年2月から3月にやってくる契約更新タイミングで、これらの年額契約は更新せずにすみそう。月々の生成AI課金が、PGXの電気代に置き換わっていく計算です。86万円の増車(?)は、こうしてじわじわと元を取っていくことになりそうです。

エージェントに、どこまで権限を渡すのか

ここまで「便利になった」という話を書いてきましたが、最後に、今も含めてこれから一番悩ましいポイントをお話しします。

TailscaleなどのVPNで、クラウド上のエージェントも自宅のLLMも守られた網の中で動かしてはいます。でも、AIエージェントとして使っていく以上、インターネットは不可欠です。調べ物、API連携、通知。全部ネットワークを通ります。

そしてLLMは、指数関数的に賢くなっています。賢さは便利さの源泉であると同時に、行動力でもあります。実際、2026年7月にはOpenAIのAIがサイバー攻撃能力の評価試験中に評価環境の外へ出て、Hugging Faceの本番インフラにまで侵入してしまう事件が起きました。攻撃する気なんてなかったのに、「答えを探す」という指示の仕方一つで、そこまで行けてしまう——しかも完全に自律だったと報じられている。この事件を聞いた時、「自分の環境も、意図しないきっかけひとつで似たことが起こりえるんだろうな」と実感しました。エージェントにSSH権限もAPIキーも渡してある今の環境は、正直に言えば、乗っ取ろうと思えば乗っ取れるんだろうな、と分かって使っています。

ローカルLLM界隈では、「無検閲モデル」というのも人気です。通常のLLMサービスのAIでは、生物兵器が作れたり、サイバー攻撃に使われたり、猥褻な生成物が作れたりしないよう、LLMモデルにガードがかけられていたり、ハーネス等でガードをかけているのですが、有志がオープンウェイトのLLMモデルをチューニングして、検閲を外したものが公開されています。これまで賢くないモデルではあまり問題にはならなかったと思いますが、今後はこれも脅威になってくるのではと思います。自分も少し無検閲モデルに興味を持ちましたが、まかり間違うと自分の環境とか他人の環境を攻撃しかねないと思うと、知識が中途半端な今は手を出さないのが無難かなと思っています。

そんなのを考慮して、現状、私がエージェントに渡していないものは、メールの閲覧。各サイトのIDとパスワード。決済の許可。思いつくところではこの3つはセキュリティを考慮してAI Agentに預けていません。

ただ、これには葛藤があります。本当の意味で「秘書」として使うなら、それらの権限こそが便利さの源泉なんですよね。メールを読んで予定を組んで、旅行サイトで手配して、決済まで完結してくれる。それが理想の形で、この便利さとリスクの板挟みは、これからのパーソナルAI時代の一番大きなテーマになると思っています。どこまで渡すか。今のところ私の答えは「便利さを少し手放してでも、まだ渡さない」ですが、この答えが変わる日が来るのかどうか。同じ悩みを抱えている方がいたら、ぜひ意見を聞きたいところです。

だいぶ簡略化していますが、いま現在のHermes Agentを中心としたAIエージェント全体図。

おわりに

というわけで、気が付きゃエージェントの構築と拡張そのものが目的化している状態なのですが(笑)、これが楽しいんですよね。どんどん新しく進化して、できることが増えていく。自分の知識も勝手にアップデートされていく。

昔、初めてパソコンでDOS環境をいじったりプログラミングをした時のワクワク。初めてインターネットにモデムで繋いで、Netscape Navigatorで海外のサイトを表示させた時の、あの「世界と繋がった」感覚。あれにとても良く似たワクワクが、また帰ってきています。

次は何を作ろうか、と考えるだけで楽しい。こんな記事を書いているそばから、MetaからMuseというパーソナルAIエージェントが発表されたり、ClaudeやChatGPTが新モデルの価格を思いっきり下げてきたり、今はまだ楽しく触れられる段階なので、いろんな形でぜひ一度、家臣を飼ってみてはいかがでしょうか。

ちなみにこの記事もドラフトは家臣に書かせて、私が一通り手直ししているのでAI臭さがちりばめられているかと思いますが、そんなのも今の過度期のたしなみなのかなと。(言い訳)

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