オーストラリアの南部中央に位置するのがサウス・オーストラリア(SOUTH AUSTRALIA)です。大都市アデレートを有し、かつては内陸部の開発拠点でした。サウス・オーストラリアといえばワインが有名で、世界的にも評価されています。

Coober Pedy
1/MAR/96
予定ではこの日はマーラ(Marla)に泊まる予定だったが、時間に余裕がありそうなので、その先のクーバー・ピディ(Coober Pedy)に向かう。相変わらず牛の横断があり、注意しつつ走る。ここらへんは多少の起伏があり、夕日に照らされたはるか先まで延びる道は、幻想的な景色だ。次第に小さな山のようなものがいくつも現れはじめた。これはオパールの採掘の穴から出た砂利の山だ。クーバー・ピディは近い。と、ここで道の脇にエミューが現れる。びっくりしたエミューは慌てて車と同じ方向に走りだしていた。さらに走ると、すぐ横の小山の斜面に念願のカンガルーが! ちょこんと立っていた。ここまでカンガルーの死体は何百と見てきたが、生きている野生のカンガルーは初めてだった。少し暗くなってライトを点けていたせいだろう。
クーバー・ピディに着くと、「地球の歩き方」にも載っていたJoe’s Hostelに泊まることにする。クーバー・ピディは夏は気温が40~50℃になる大変暑く、乾燥した町である。よって、街の半分ぐらいが地下(Underground)にある。地下といってもちょっとした丘をくりぬいて造ったものが多い。ホテルや教会などが地下にあるのである。もちろん我々は地下に泊まることにした。また、ここでは水が非常に貴重であり、シャワーでお金をとる所もある。我々の泊まった所は無料だったが、歯磨きしてるだけでも宿のおばちゃんは蛇口に注意するようしつこく言っていた。夕飯は近くのギリシャ料理の店で、ちょっとリッチに。そして涼しい地下で寝ようかと思ったら、蒸し暑い! 話が違う。外の方がよっぽど涼しい。おまけにオパールを掘った時の穴なので、鉱物資源のにおいがする(あたりまえ?)。なかなか眠れなかった。ちなみにここのおじちゃん、おばちゃんが妙に元気で陽気な人で、本当はここに滞在する予定はなかったものの、押しに負けて翌日のツアーに参加することにした。ここまで急ぎ足で、予定より先に進んでいたので、1日ぐらいゆっくりしてもいいだろう。

2/MAR/96

クーバー・ピディは、考えていたよりもきれいな町で、静かであった。ハエもそんなに多くない。ツアーは午後からなので、午前中いっぱい眠る。朝メシ兼昼メシを食べて、ツアーに参加。ガタガタと車を揺らしつつ、採掘場所に向かう。無数にある山の横には、ポッカリ穴が開いており、落下注意の看板の意味が分かるような気がした。クロコダイル・ハリーという有名らしい人の家(もちろん丘をくりぬいて作られている)に入り、中を見る。壁(岩)中にいろいろな人のコメントが書かれていた。マッドマックスの撮影現場も見ることができた。そして、期待していたオパールの探索。炎天下の中、落ちているオパールの原石を探すのだ。最初にすぐ1個、きれいなブルーオパールを見つけて何となくコツをつかみ、10個ぐらい見つけることができた。どれくらいの価値があるのか分からないが…。

その後、その場を移動し、木陰で涼んでいるカンガルーや、果てしなく続く柵、ディンゴフェンスを見る。これはかつてディンゴの侵入を防ごうと作った、世界でも有数の無駄な建造物だ。とにかくここは暑く乾いた土地であった。高台にビッグウインチ(現在は飾り物)があり、そこからこの町を見渡すことができた。それから、地下の教会も見た。ここは涼しかった。なんとも不思議な町である。
ツアーの後、オパールのディスカウントショップへ。オパールの相場とか価値自体私は全く知らないが、ネックレスや指輪、ピアスなんかが15ドルぐらいからあった。原石がビン詰めになって5ドルぐらいで売っていたりもした。
Coober Pedy – Port Augusta – Ceduna
3/MAR/96
今日は900km以上走るので、朝早く町を出る。まだ暗いのでライトを点けて走る。すると、そのライトのせいか、道端でカンガルーが跳ねているのが見えた。どうやらライトに寄ってくる性質はハンパじゃないらしい。またもやエミューを見るなど、この辺は動物が多いように思えた。しばらく走ると、湖が見えてきた。真っ白な湖だ。これは塩の湖らしいが、ケアンズから離れて久しい我々には、もうすぐ見えるはずの海への期待でいっぱいになった。

ポート・オーガスタ(Port Augusta)に入っても海は見えなかったが、大きな川があり、膝まで入った。ここは芝生もきれいで、水と緑のありがたみを感じた。乾いた土地を走ってきた我々には、水があるという安心感からか、自然と笑顔になっていた。毎度のウルワースで買物を終え、先を急ぐ。

いったん内陸に入り、セデューナ(Ceduna)を目指す。ここには海が待っているはずだ。ハイウェイを進み続ける。カンガルーの死体も減ってきた。もう少しで着くという所で、はるか向こうにキラキラ輝く水が見えた。海だ! 夕日に照らされたサザン・オーシャン(SOUTHERN OCERN)の海はとても眩しく、美しかった。キャラバンに泊まることにして、さっそく海へ走る。桟橋があり、そこで風を受けつつ海を眺める。ここら辺はカニがとれるらしく、皆釣りをしていた。キャラバンパークに戻って、ガーリックスパゲティを食べる。これはなかなかの出来だった。毛布が無く、窓を開け放したままだったので、夜は寒かった。

Ceduna – Border Village
4/MAR/96
ナラボー平原(Nullarbor Plain)はあまり町が無い。今日は1200kmを走り、一気にナラボー平原を抜ける予定だ。しばらくすると、突然、霧が覆いはじめる。ちょっと幻想的な光景だった。ガス欠は恐かったので、内陸部に入る頃からガソリン用ポリタンクを買って、予備のガソリンを積んでいたが、使うことはなかった。ひたすら西に進んでいるため、太陽を追っかけるカタチとなった。このため、止まるペトロステーションの時刻がどんどん変わっていく。時間が戻ってしまうのだ。しかも3月1週の日曜でサマータイムが終わるので、余計に分からなくなってしまった。いつまで経っても太陽がなかなか傾かない。なんとも奇妙である。
カンガルー注意の標識は見ていたが、この辺はウォンバット注意やラクダ注意の標識が出てくる。ナラボーを運転した時の衝撃的な出来事は、鳥をはねてしまったこと。実は内陸部を南下している時に仲間の1人が鳥をはねてしまって、鳥がかわいそうだと思っていたのだが。自分もやってしまった。早くから鳥の集団に気づいていて、クラクションを散々鳴らしたのだが、やたら鈍く、寸前で飛び立ちはじめ、1羽がボンネットの高さで飛んできてしまったのだ。本当にかわいそうなことをした。こういう鳥とは別によく見かけるのが、カンガルーの死体にたかる鳥たちである。カラスみたいなのが何羽もいる場合もあれば、デカイ鷲が悠然と死体の上に立ち、我々の車を睨み付けている場合もある。カンガルーの肉をついばんでいるのを見るとちょっと背筋が寒くなるが、これも自然の掟である。

ボーダー・ビレッジのペトロ・ステーションには、ナラボーの通行証明書が売っていた。つい買ってしまった。ここを過ぎるとすぐ、ウエスタン・オーストラリアだ。