オーストラリアの北東部に位置するのがクイーンズランド州です。我々の旅のスタート地点 となるケアンズをはじめ、日本人にはメジャーなブリスベンやゴールドコースト、そして世界最大 の珊瑚礁グレートバリアリーフがあります。

CAIRNS
24/FEB/96
3月ということもあり、空港を1歩出ると熱帯植物と湿気が体を包み、「むしあつい」っ て感じ。天気の変わり方が激しく、「晴れている」と喜んでいると、突然スコールが襲ってくる。まさに熱帯雨林気候(Rain Forest)ってやつだ。
ケアンズには2日滞在してグレートバリアリーフに行こうと思っていたので、40ドルのクルーズ(確か「~Queen II」というクルーズ)を空港で予約。そして、タクシーで街へ、目指すは格安ホテルの並ぶエスプラネード(Esplanade)!

エスプラネードは海岸沿いの通りで、ヤシの木なんかが並んでいる、いかにも南国っていう気分にさせてくれる。朝早く、宿の受付も閉まっていたので、さっそく朝メシタイム。歩道に出てるテーブルでの、オージーブレックファースト、それにしてもコーヒーが苦い。
どの宿にしようか迷っていると、日本語ペラペラのにーちゃんに声をかけられ、結局その宿、ジミーホステル(Jimmy’s Hostel)にあっさり決まった。
この日は動物とたわむれるのが目標だったため、バスに乗ってサトウキビ畑(やたら多い)を抜け、ワイルド・ワールドへ、ここでは、カエルのショー、ヘビショー、クロコダイルショー、オウムショー(芸達者!)と、かつて行ったシドニーの動物園と比べて、爬虫類が充実していた。仲間の一人は、コアラの抱っこを目標としていたが、なぜかワニを抱いて写真撮影、目標達成ならず。ここではコアラは抱けなかった。
どこもそうだが、ここでもカンガルーは野放し状態であった。日本では大事にされるけど、ここではほったらかしだ。

園内をウロウロしていると、偶然、飼育係の人がウォンバットを抱いているのを発見。さっそく記念撮影。ウォンバットは普通、寝てるかモソモソ歩いてるのを塀ごしに見るだけだったので、触れたことは貴重であった。結構ゴワゴワしていた。

街に戻り、オーストラリアの大きい街ならどこにでもある、ウルワースというスーパーマーケットで、材料を買い、宿でサイコロステーキとしゃれこむ。やっぱりここは牛肉が安い。相変わらず雨が降ったり止んだりの天気だった。

Great Barrier Reef
25/FEB/96
朝から雨で、なおかつ遅刻気味の我々を船は待っていた。船はカタマランなんてゆーイイモノではないので、遅い上に揺れる揺れる。三半規管の弱い私はすぐ酔ってしまった。
船はまず、ミケルマス・ケイ(Michaelmas Cay)へ、この島は鳥がウヨウヨいる。ここに上陸して、シュノーケリング。私は今までシュノーケリングでたいしたモンを見たことがなかったので、期待してなかったのだが、潜ったとたんに白い魚が見えた。さらに進むと、はじめて見るサンゴの大群、熱帯魚がウヨウヨ、イソギンチャクがワラワラ、そして直径6~70cmのシャコ貝がすぐそこで口を開けている! 動かないのかと思ったら、落としたサンゴの死骸が触れた瞬間、「バクン!」と口を閉じた。さすがに恐くなって近寄れなくなってしまった。聞けばダイバーがこれに足をはさまれると、動けなくなって足を切るしかなくなることもあるそうな。


シュノーケリングに夢中になっていた我々は、またもや船に戻るのに遅刻してしまった。次に着いたのは、島ではなく、ヘイスティング・リーフ(Hastings Reef)というサンゴ礁地帯であった、ここでグラスボトムボートに乗ったのだが、見えるは見えるは。かつて乗ったことのあるグラスボトムボートとは大違いであった。自然がこれほどカラフルな色を持っているとは驚きであった。


本当はここで体験ダイビングをしたかったが、うまく話が通じてなくて、結局シュノーケリングに、がっかりしたのもつかの間、シュノーケリングでもすばらしい世界を見ることができた。たくさんのテーブルサンゴの間で熱帯魚たちが泳ぎ回り、たまにデカイ魚がモソ~っと泳いでいる。しばらくすると1匹、2匹と、サメがやってくる! クルーの人が説明の時言っていた「シャーク」はジョークではなかった。しかし、私がサメより恐かったのは、数メートル先をプカプカ泳いでいたクラゲだったりして。グレートバリアリーフは、最高に良かった! これで40ドルは安い!
CAIRNS – TOWNSVILLE – Pentland
26/FEB/96
今日からいよいよ車の旅が始まる。レンタカーはあらかじめ日本で予約を入れておいたハーツのレンタカーである。パンフレットの写真どおり、フォード・ファルコン・ワゴン(日本では売ってない)だった。普段5ナンバーに乗っているせいもあったが、やっぱり広い、これなら長時間車の中でいられると思った。日本でもほとんどが3ナンバーになったが、この車に比べるとやっぱり狭い。

ケアンズで必要なものを買い込み、パンをかじりつつタウンズビルを目指す。すでに昼になってしまっていた。道の両脇には草木が生い茂り、雨が降ったり止んだり。そんな熱帯雨林もいつしか消えていき、穏やかな景色になっていく。そして、ひとつ、ふたつとアリ塚が見え始める。 ドライバーが変わってすぐ、検疫所が現れた。野菜やフルーツがないか調べるのだ。ご存知の方も多いと思うが、オーストラリアは食品等の持ち込みに大変うるさい。南半球独特の生態系の上に、様々な気候が入り交じっているからだ。そこに存在しなかった病気などは、免疫が全く無いためにすぐ広まってしまう可能性がある。もちろん我々はこれをパスした。


チャーターズ・タワーズ(Charters Towers)でドライバーが代わると、本にあった通り、カンガルーの死体が現れ、タイヤのゴム片が散らばりはじめる。周りの景色も、赤茶けた大地に変わり、空はより大きく広がる。
リッチモンド(Richmond)まで行く予定だったが、暗くなってきてしまったため、ペントランド(Pentland)で宿をとることにした。暗い道でライトを点けて走ると、カンガルーが寄ってきて車の前に飛び出し大変危険だからだ。日本ではよく問題になるが、RV車の前の部分にカンガルーバーと呼ばれる金属のバーがついている事が多い。あれは日本でははっきりいって必要ない。オーストラリアで暗い道を走るとよく分かる。我々の乗っていた車は普通のワゴンなのでついていなかった。何も無いところでカンガルーに激突されエンジンが止まったらそれこそ洒落にならない。常にカンガルーに脅えながら走らなくてはいけなくなる。それを防ぐためにカンガルーを跳ね飛ばすバーをつけるのだ。だから田舎の方にいくと、普通の乗用車にも、似合わないカンガルーバーが付いていたりする。日本では人を跳ね飛ばすぐらいしか用途が無いといっていいだろう。
宿はキャラバンパークの中のプレハブっぽい部屋、2部屋あると思ったら1部屋はブロック塀にブリキの屋根をのせた簡素なものだった。よって、夜になると隙間から虫が入り込んで部屋中飛び回る。カマキリなんかが壁にくっついていたりした。夕食は外のカマドを使ってスパゲッティーとスープ。カマドっていってもマキ割りから始める原始的なものであった。想像を絶する環境の中、空を見上げると無数の星が! 町に明かりがほとんど無いためはっきり見える。待望の南十字星も発見した。みんな疲れていたためかシャワーも浴びずに寝てしまった。


Pentland – Mount Isa – Camooweal
27/FEB/96
牛の泣き声で目が覚める。耳を澄ますと、列車の走る音が聞こえてくる。ずっと線路の横を走ってきたのに今まで1度も列車に出会うことがなかった。早速眺めに行ってしまった。そして、朝日の中、贅沢なモーニングコーヒーを飲み、7時半に出発、昨日の遅れを取り戻すため、荒野を爆走する。

オーストラリアのドライブというと、一直線の道で楽チンに思えるかもしれないが、実際はなかなか気を抜けないものなのである。平均速度が時速100kmを超えるのに道の質は一般道路のものと同じで、なおかつ路肩は砂利である。一瞬でもハンドル操作を誤ればどうなるか想像しただけでも恐ろしい。さらに高速道路ではまず経験することのない時速100kmのすれ違い。相手がロード・トレインだったりしたら、車が吸い込まれるようになる。

いつのまにか360°地平線になっていた。これが求めていた景色であった。しかし実際に感動したのは、地平線よりもむしろ大きく広がる空であった。こんなに空が大きいとは! 日本と同じ空のはずなのに…。遠くに見える木々の向こうに、森が見える。なんだか妙にユラユラゆれると思ったら、蜃気楼であることがわかってきた。こんなこともここでは当たり前のことなのだろう。


ジュリア・クリーク(Julia Creek)で昼食をとる。車の前面、吸気口にはバッタがビッシリくっついていた。オーバーヒートになると恐いので、棒でガリガリこすり落とそうとしたが、あまり落とせなかった。きりがないので、出発。直線だけの道が山道に変わっていく。そして久しぶりの雨。

この辺りには第二次世界大戦の記念碑が立っていたりした。日本軍がダーウィンに攻め込んでいたことは知っていたが、こんな所まで戦争の爪痕が残っているとは…。あらためて戦争というものを深く考えさせる発見であった。きっと飛行機で移動していたら知らないまま通り過ぎているだろう。
雨が止み、山道を越えると、ニョキニョキと立つデカイ煙突が見えてきた。マウント・アイザだ。かなり大きな町で、かなり暑い。乾燥した暑さなのでだるくはならないが、帽子をかぶらないとクラクラきてしまうだろう。店が多いので、ここで買い物をして、先を急ぐ。予定地につくかどうか微妙なところだ。

途中、牛が道路を横断しているところに出会う。こんなのにぶつかったらひとたまりもない。車を停車して横断が終わるのを待つ。さらに進むと、道が狭くなってしまった。これは誤算であった。結局遅れを取り戻せぬまま、カモーウェルにて宿をとる。宿は昨日と違ってモーテル。近くのバーで缶ビールを買い込んだ。この時、英語の堪能なはずの仲間が、英語で言われた「8」を理解できなかった。なぜならオーストラリア人は「8」を「エイト」ではなくはっきりと「アイト」と発音するからだ。まあ、なにはともあれ久しぶりのシャワーとビールを堪能した。