「トップ・エンド(TOP END)」と呼ばれる、オーストラリアの北部にあるのがノーザン・テリトリー(NORTHERN TERRITORY)です。地球のヘソともいうべき、有名なエアーズロック(Ayers Rock)、最北部にはキャサリン渓谷(Katherine Gorge)やカカドゥ国立公園(KAKADU NAT.PARK)といった、いかにもオーストラリアらしい自然が存在する州です。
Camooweal – Tennant Creek – Ti Tree
28/FEB/96
早い起床、クロワッサンとコーヒーで朝食を済ます。昨日までの遅れを取り戻したい。ガンガン突き進んで、本日最初の目的地であるバークレイ・ホームステッド(Barkly Homestead)に着く。いつもの通りセルフ・サービスでペトロ(Petrol)を給油。
休むまもなく出発、とエンジンをかける…、が、かからない! 何度回してもセルモーターの音がなるばかり。とうとう恐れていた車の故障に遭遇してしまった。ロードハウスのおやじに何とか説明して、修理場で修理作業をしてもらうものの、原因が分からず、レンタカー会社と連絡を取ってもらったが、しばらくかかるそうなので、仕方なくコーヒーを飲み、ミニビリヤードをやりはじめる。こればっかりはどうしようもないのだ。
4時間程経って、車が復活した。聞けば、ガソリンタンクに水が入っていて、エンジンが動かなかったとのこと、ということは、ここのガソリンのせいじゃないか? なんて思ったけど、とりあえず直ったので先を急ぐことにした。修理代とかは、レンタカー会社との間でうまくやるだろう。
さて気分を戻すために音楽でも聴こうと、デッキにカセットを入れる。が、今度はデッキが動かない。よく見ると、セキュリティ・ロックがかかっている。さっき車をいじっている時に、ヒューズをとったりしたから、電源が落ちてロックがかかってしまったのだ! 音楽を失った我々は、若気の至りで、「マジカルバナナ」とかやってしまった。でもおかげで退屈をしのぐことが出来た。
テナント・クリーク(Tennant Creek)で買物をし、スチュワート・ハイウェイ(Stuart Hwy)を南下する。ロードトレイン(Road Train)と、ガンガンすれ違う。すれ違うだけならいいが、追い越すのは大変だ。なんせ3両編成のロード・トレインともなると、全長50mにも達する長さになるからだ。真後ろから見ると、少し左右に動くだけで全体が左右に波打つ様に見える。でも、追い越すと運ちゃんが陽気に手を振ってくれる。変化の無い道にちょっとした変化があるとすれば、それはすれ違ったり追い越したりする車。そのためか、すれ違う時など、みんな手をあげてくれる。スピードがスピードなので、あっという間だし、ちょっと危ないような気もするけど…。この道では、ひときわ古い車に家族大勢でぎゅうぎゅう詰めになって乗っているアボリジニの人たちともよくすれ違う。内陸部ならではだ。
このスチュワート・ハイウェイ沿いに、デビルズ・マーブル(Devils Mrbles)がある。火山岩の侵食によってできた丸い岩がゴロゴロころがっている。我々がいる時は、他に人っ子一人おらず、風の音が聞こえるだけだった。大地の息吹を感じる瞬間だ。遠くの方まで巨大な岩が転がっている。自然が作り出した芸術だ。
バロークリーク(Barrow Creek)で給油する。この辺りまでくるとペトロもリッター1ドル近くなり、日本とあんまり変わらなくなる。
少し進んで、ティー・ツリー(Ti Tree)に宿をとる。今日も結局あの立ち往生のせいで、予定より手前での宿泊となった。バックパッカーズは10ドルのベッドだけあるような部屋だったが、ペントランドよりましだった。ガーリックトースト&ベーコンとヌードルの食事をとる。今回の旅で大活躍したのはこのガーリックパウダーであった。
シャワーを浴び、落ち着くと、天気が悪くなってきてはいたが、雨がどしゃ降りになり、雷が鳴り始めた。さらに、突然部屋の明かりが消えてしまった。停電だ! とりあえずローソクの光でその場をしのぐ。ちょっと時間があったので、隣のバーで生ビールを飲む。最高の気分だ。日本じゃやらないくせにジュークボックスなんかかけたりして、楽しいひとときを過ごした。日本から2カートンの煙草を持ってきていたが、仲間の1人が店の1人と煙草を交換した。私は吸わないのでわからないが、だいぶまずかったらしい。ちなみにオーストラリアは日本以上に煙草が高く、6ドルぐらいする(1ドル=80円くらい)。なおかつまずいのだから、煙草を吸う人は、日本の免税店で煙草を買っていくことを勧める。(1人1カートンまで)
Ti Tree – Alice Springs – Yulara
29/FEB/96
今日の目標はエアーズロック(Ayers Rock)だ。昨日に引き続き南下する。途中、ペトロステーションに寄り給油。相変わらず高い。オーストラリアのペトロ・ステーション(日本のガソリンスタンド)は、高い人件費の関係で、だいたいがセルフ・サービスである。SSの店員なんてやったことなかったから、最初はおそるおそる入れていたが、だんだんこぼれても平気になっていった。入れおわると、レジの店員にメーターに表示された金額を告げて、料金を払う。なんとものんきなシステムだ。
久しぶりに大きな町、アリス・スプリングス(Alice Springs)に着く。インフォメーションに寄り、T/Cを替えに銀行にも寄る。ハーツに寄って、車のオーディオデッキのセキュリティの番号も教えてもらう。やはり大きい街だが、思ったより日本人はいなかった。
予定より遅れているので、先を急ぐ。エルドンダ(Erldunda)でハイウェイから別の道に入り、西に進む。進むにつれ、赤茶けた砂の大地に変わっていく。ここが乾燥地帯であることを思い知らされる。遠くの方では小さな竜巻が砂を巻き上げていく。気が付くと前方に横長の巨大な固まりが現れた。エアーズロックだ! みんなで「すげー」などといって感動していたら、だんだん通り越していく。よく見ると形もおかしい。距離をよく考えると、それは手前にあるマウント・コナー(Mt.Conner)だった! みんな大笑いである。おかげで本物が見えてもあまり感動がなくなってしまった。我々はこの山を「ウソ山」と名づけた。山にしてみれば、いい迷惑だ。
ユララ・リゾートに着き、キャラバンを予約する。そしてそこからエアーズロックを目指す。国立公園内に入り、進むにつれ、その雄大な姿が大きくなっていく。カルチャーセンターによって、いざエアーズロック登山。考えていたよりずっとキツく、危険で、ハエが多い。途中、何度も休憩をとりつつ頂上を目指す。気が付くと、眼下に広大な景色が広がっていた。頂上近くにくると、風が強く吹いていた。波のような岩を何度も乗り越えて、プレートのある頂上までたどり着く。
360°に景色が広がっていた。来る途中のウソ山も、マウント・オルガ(Mt.Olga)も見える。そして大地には風の刻んだ模様が延々と続く。いつまで見ていても飽きない。いくら写真を撮っても撮りきれない。そこには地球があった。
岩を降りる途中で夕日が沈んだが、岩の色が少しずつ変化するのを見ることが出来た。登った身でえらそうなことは言えないが、このエアーズロックは、アボリジニたちにとってはウルル(Uluru)と呼ばれる聖地であり、本来司祭しか登ることができないものなのだ。だから我々観光客が登るのは彼らには胸の痛むようなことなのである。それをうったえるためにカルチャーセンターができたのである。とはいえ、登りたくなるのは仕方の無いこと、もし登るのであっても、そのことを頭に入れておきたいものだ。
さて、リゾートでの食事は、久々のごはんと牛、ラムのステーキと、予定に追いついたことを祝って豪華なものとなった。ここでは仲間が流れ星を見た。ここでも星はたくさん見えた。
Yulara – Mt.Olga – Stuart Highway
1/MAR/96
今日は早起きして、エアーズロックの日の出を見る。色の変化は確かにすばらしかったが、あまりの日本人の多さに驚いた。ここまでの道のりでこれほどの日本人を見たことはなかった。いったんリゾートに戻り、今度はマウント・オルガ(Mt.Olga)へ向かう。こちらも近づくにつれ、不思議な威圧感が押し寄せてくる。車を降り、トレッキング。しかし、ここはハエの数がハンパじゃない。内陸部に入ってから少しずつ多くなってきてはいたが、ここは1番すごかった。すれ違った外人さんも「メニーフラーイ(Many flies)」と言っていた。このハエは日本でよく見るハエに比べ一回り小さい。さらに、ここまでいろいろな所でハエと戯れてきたので分かったのだが、こいつらは日本のハエのように食事に寄り付くわけではない。あえて人にたかってくるのだ。しかし不思議なことに、衣服の中でもとまる場所ととまらない場所がある。白に近い明るい部分にはとまらず、黒に近い部分に「ビッシリ」ととまる。まさに「ビッシリ」で、体を犬のように振ると、一斉に飛び立つ。とにかくうるさいのだ。あまりにひどいので、風の谷は見ずに、ここを出発した。
オルガを出て、再びスチュアート・ハイウェイへ。南下を始めると、またもや牛の横断。ここは牛が多い。日本の牧場とはスケールの違う放し飼いなので、道端に団体さんがいたりする。親の牛はのそのそ歩くので予測はつくし、無理はしないのだが、子牛は親めがけて走って横切ってしまう。子牛には要注意だ。
クルジェラ(Kulgera)を過ぎると、もうすぐサウスオーストラリアだ。