なにげに書くネタは順番待ち状態なのに、書き手の腰が重いため更新ものんびりペースとなっておりますが、今回は昨年末に買い替えたカメラ、LEICA Q2(ライカQ2)の話題に触れたいと思います。もう少し山で使ってから、と思っていましたが、いよいよ今週末に後継機となるQ3が公式発表されそうですので、あれこれ悩みが増える前に(笑)書いておこうと思った次第です。

いや、お前半年前にCANON EOS R6に買い替えた話書いてたやん! というツッコミは甘んじてお受けする覚悟です。あのブログを書いた後に、まじめにカメラとの向き合い方を考えて、それほど時を経たずして、それまで保有していたEOS R6とRFレンズたち、そしてリコーのGRIIIまで、全て下取りに出して中古のライカQ2を購入してしまいました。中古とはいえ、これだけの資産を全て差し出してもなお、差額を払わなければないほどの「高級なカメラ」の世界に足を踏み入れてしまいました。
なぜこんな短期間で買い替えたのか? というところですが、EOS R6の記事で書きましたカメラに対して何を求めるか? に対する答えとして、EOS R6は「現実的結果主義」、振り返ってEOS Rは「撮影体験ロマン主義」だったという事を書いておりました。で、やはりEOS R6でオートマティックに良い写真が撮れるのは、自分が一眼カメラに求めていたものとズレてきているな、という思いが強くなり、また、これまで微塵も選択肢として考えていなかったライカのカメラが、「撮影体験ロマン主義」という価値指標から俄然検討対象となってきて、かつライカQ2というカメラが思いのほか自分の利用用途にもマッチしているという再発見になり、年末年始の勢いも借りて購入に至った。という経緯でございます。

EOS R6とライカQ2は、どちらも高画質の写真、高画質の動画を撮れるフルサイズセンサーのカメラですが、ある意味真逆のコンセプトを持つカメラです。EOS R6が低画素(有効2010万画素)なセンサーの代わりに、高感度に強く、高速なトラッキングAFと毎秒20コマの連続撮影により、暗くて軽くて安いズームレンズでも望遠撮影が楽しめるのに対し、ライカQ2は高画素(有効4730万画素)なセンサーに、f1.7の明るい単焦点28mmレンズ固定にして、クロップ(35mm、50mm、75mm)でズームのような焦点距離の使い方ができる。というコンセプトになっています。
EOS R6の記事で、画素数が少ないR6で雷鳥を撮影した際に、クロップしてもLightroomのスーパー解像度で水増しできちゃうよ、というのを書きましたが、まさにQ2のクロップでも同じ技が使えちゃうわけです。Q2は元の解像度が高いため、35mmと50mmはそのまま使っても十分な画素数が残りますが、75mmにクロップしたものはどうしても少しぼやけた写真に見えてしまいます。その場合、スーパー解像度で水増しすれば良い、という考え方があることが、Q2購入の動機の1つでもあります。加えて言うと、私が使っているLightroomでQ2のRAWを取り込むと、クロップして撮ったものが元の画像全てが残ったまま、Lightroom上でクロップした状態で表示されます。なので、後からクロップの範囲を自由に変えることができる。という現像ソフトとの相性の良さもありました。

で、ライカQ2を使った最初の印象ですが、まずは構えてすぐ思ったのが「ファインダー明るい! 見やすい!」です。EVFのスペックはR6と比べて大差ないはずなんですが、とにかく明るくて広くて見やすいです。そして、値段が値段なので当たり前なのですが、その質感。カメラ上部のダイヤル高さなど水平デザインになっており、アルミ削り出しの触り心地。フォーカスリングを回した際のしっとり感など。触っていて心地よい。こんなこと書くと怒られちゃいそうですが、自分としては過去所有していたペンタックスのK-01にリミテッドレンズを付けていたのを触っている時を思い出しました。K-01もダイヤル高さなどが水平デザインで、アルミ削り出しのダイヤル、ボディはエンジニアリングプラスチックでしたが、リミテッドレンズのフォーカスリングも同じくしっとり感がありました。(Q2の方がトルク感が強いですが)
自分は登山で使うことを想定しており、そのままだと握りにくいので、純正のサムレストと、JJCというところのグリップを付けました。ちょっと重くなってしまいますが、これでだいぶ握りやすくなりましたし、このグリップはアルカスイス互換のミゾもあるので、そのままミニ三脚にも付けやすくなりました。

シャッターはレンズシャッターのせいか、「コクッ」っというフィーリング、これはこれで良いです。ただ、EOS R6、GRIIIと触り比べると、慣れもあるけど微妙にボタンレスポンスが遅く、撮影テンポがワンテンポ遅くなります。構えてじっくり撮る、というのが合っているんでしょう。逆に言うと、EOSもGRもサッと構えてパッと撮れる。快速という面ではベストだったんだなと感じました。
オートフォーカスのデフォルトは「多点」ですが、EOS R6に慣れてしまっていると狙ったところに100%いってくれず、即座にフォーカスポイントも移動できないので、「フレーム」と同じ動作ができる「顔認識」にして、十字キーでポイントを移動して撮影、というスタイルになりました。移動したポイントを戻したい場合は、画面ダブルタップで中央に戻す、にしています。(これはペンタの場合はグリーンボタンだった) ある意味、ペンタックス時代の昔懐かしいやり方に戻った感じ。
試しにマニュアルフォーカスを試してみると、フォーカスリングの回す感触、自動拡大になって分かり易いピーキング表示によりフォーカスを合わせやすくなるEVFと相まって、撮るのが楽しい!!
撮影モードは基本はPモードで動きますが、そのまま絞りリングを動かすとAモード、シャッタースピードを変えるとSモード、両方動かすとMモードになります。ペンタックスのハイパープログラムに近くなって、自分としてはやり易くなりました。と、見せかけて、絞りリング、シャッタースピードダイヤルというトラディショナルなマニュアル操作性にも慣れさせて、密かにライカMシリーズの橋渡しも企んでる感じがしました。(笑)
なるほど、よくライカQはM型ライカに誘導するためのライカ入門機と言われているようですが、その理由が分かりました。これは沼の入り口になりますね。自分は動画撮影も併用するので、幸いにも沼にはハマらずに済みそうですが。。。
自分はプロでも玄人でもないので、描写性能について蘊蓄語れるほどの眼は持っておりませんが、撮影した写真の印象としては、
- 描写(被写体)の線が細い
- 光と影のコントラストが強く感じる
- 立体感のある絵、ボケがなだらか
- なんかピントがあった被写体の素材感がすごくよく出る

EOS R6の時のクセでついつい絞りオートのままで撮ってしまうのですが、その場合、遠景でもF5くらいになるケースが多いです。メーカーとしても開放寄りがお勧めなのかな?
ライカの情報を漁っていると、これらの描写について半ば宗教的に語られることも多いですが、自分なりにこの描写の特徴はどう作られているのかなというのをいろいろ調べてみました。確固たるエビデンスは無いのですが、この被写体の線の細さはおそらく、レンズの特性の持たせ方として、ピントのボケる山がピーキーになるように作られているのではないかと思われます。もちろんf値が明るいというのもありますが、絞っても値以上に感じます。これは動画でも明らかにピントが合っているところとそれ以外のボケとの輪郭の細さがはっきり出ます。これにより立体感のある絵や、ピントが合った被写体の素材感が出るのにも繋がっているのではないでしょうか。
また、ボケの柔らかさについては、レンズ自体の特性のほかに、レンズシャッターであることも関係しているようです。レンズシャッターはシャッタースピードにもよりますが、三角波の影響によりボケの輪郭が柔らかくなるという特性もあり、このあたりも絵作りに影響しているように思えます。私の勝手な解釈としては、ライカの技術陣はとりわけレンズの収差の影響を極力無くすことに相当なパワーを注いでいるようですので、レンズ固定式でレンズシャッターにできるというのも全体パッケージの利点として、トータルの画質性能を設計しているのではないかと感じました。

いちおう、登山に2回ほど持ち出していますが、これまでのミラーレス一眼+ズームレンズ(1380g)と比べ、純粋に小さく、軽くなりました。(ハンドグリップやサムレストも入れて、923g) 昨年秋から、登山道具の軽量化を進めており、カメラの軽量化も課題でしたので、かなり改善されました。これも買い替え動機の大きなところかな。思えばライカの歴史でも、体の弱かったバルナックが自分でも持ち運べる小型のカメラを、ということで「ウル・ライカ」を開発し、それが世界に広がったというのを考えると、このライカQシリーズもそのDNAを現代的に受け継いだのかなと思います。
私は登山では写真を撮り、そして動画を撮って、というように、写真撮影と動画撮影をどんどん切り替えて撮っていくのですが、ライカQ2では静止画/動画切り替えにやや手間がかかり、また、切り替え方法を工夫すると補正した露出等がリセットされてしまうため、4月中旬の山行で使った際はこれが若干問題ではありました。が、なんと4月下旬に出たファームウェア5.0.0アップデートで静止画/動画の切り替えをFnボタンに割り当てられるようになり、物理ボタンでワンアクションで切り替えできるようになりました。5月のGWの山行で早速使いましたが、まさに自分が欲しい機能で簡単に切り替え撮影ができるようになりました。

Q2はよくレビューでも書かれている通り、屋外など明るいところでデフォルトの露出状態で撮影すると、雲などがすぐ白飛びします。逆に真っ暗に見える暗部のディテールはRAW現像するとかなり残っています。自分はこれまで撮影時の露出補正なんてしたことなく、しなくても後でRAW現像でなんとでもなると思っていたので、本当に白飛びしちゃったのはビックリしました。ですので、基本は-2/3段ほど露出補正をしておいた方が良いです。私はカスタマイズ可能な右親指のところのダイヤルは、基本的に露出補正を割り当てています。
これはQ2を選んだ段階で多少覚悟していたことなのですが、写真撮影にしろ動画撮影にしろ、やはりコントラストAFは信頼度があまり高くありません。背面液晶があまり解像度が高くないせいか、撮った後の画像ではピントが合っているように見えても、家に帰ってLightroomで見てみるとピントを外していた、ということもしばしばありました。特に動画でAFを使うとちょいちょい迷ってピントが前後にウネウネ動いてしまうため、マニュアルフォーカスで撮るのがメインになってしまいました。歩きながら被写体を撮る際などは、距離目盛りを見てフォーカスリングを動かすのが一番使いやすいという、この時代になってまさか距離目盛りを眺めて撮影するなんて風になるとは思っていませんでした。ただね、ライカ特有のフォント含め距離目盛りが見やすいんですよこれがまた。ほんとわざとアナログの楽しさに誘導してるでしょこの機種。

ライカQ2は高画素機がゆえ、EOS R6と比べると高感度にはそれほど強くありません。GRIIIと同様に、ノイズは素直なので嫌味ではないのですが、室内などで撮影した際に思いのほかノイズが出ることがありました。が、これもまたLightroomがAIノイズ除去機能を追加してきたことで、ノイズ軽減も簡単にできるようになりました。う~む、まるで自分の利用形態を読み取っているかのようなアップデート。素晴らしいとしか言いようがありません。
写りの良いフルサイズ一眼が小型になったことで、山だけでなく日帰りツーリングなどでも気軽に持ち出せるようになりました。マクロ切り替えで最短17cmまで寄れるので、登山道中の花なども苦労せずアップで撮れます。いやいやホント良いことづくし。ただ、勢いでGRIIIまで下取りに出してしまったことは若干後悔しています。Q2はコンパクトカメラとも言えるので、漠然とGRIIIの代わりにもなると思っていましたが、あらためてGRIIIが気軽に持ち出せるスナップシューターなのだと痛感しました。GRIIIのあのスクエアでポケットにも収まる形、軽さは、気軽に持ち出すギリギリのラインで設計されており、いくら画質が良くてもQ2ほどのレンズの出っ張りと重さになると、GRIIIのように街歩きで気軽に持ち出すことは出来なくなります。これは個人差があるとは思いますが、自分は街歩きレベルでは持ち出さなくなってしまいました。(最悪、スマホで撮れば良いし)

Q2はIP52等級の防塵防滴で、多少は登山のような雨のリスクもある使い方にも耐性はあるとは思いますが、かつて防塵防滴でもかなり強い方のペンタックスのK-30を雨でガシガシ使って基盤がやられたり、EOS Rの底面接点が霧雨レベルでおかしくなったりした経験がある身としては、防水性能が2レベルなのでそれなりに慎重に扱う必要があるかと思います。(レベル2は、「15度以内で傾斜しても鉛直に滴下する水滴に対して保護されている」というレベル) ただ、レンズ交換が無い(できない)ので、風の強い日にチリやホコリがセンサーに入るリスクが無いのは良いですね。
相変わらずつらつらと思いつくまま書いて長い長いブログになりましたが、総じてライカQ2は多少の不便も含めて楽しめており、良い買い物だったと思っています。「撮影体験ロマン主義」に回帰するためにライカの世界に足を踏み入れるという、ある意味「悟り」の境地に至ったかと思いましたが、よくよく分析すると山で使う道具として軽くてコンパクト、それでいて写真も動画も印象に残る描写を残せて、質感など所有感も満たせて、マニュアルフォーカスで楽しく撮影できるという、なかなかによい落としどころのパッケージ=最良の選択肢に行きついたのではないか?と思いました。
正直、今明らかになってきているQ3のスペック情報を見ると、チルト液晶やさらなる高画素、USB-Cの搭載、位相差ハイブリッドAFなどなど、気になる強化点が多いのですが、Q2に買い替えるときの「撮影体験を楽しむ」というのを、しばらくはこのライカQ2で味わいたいなと。そして前述したとおり、不思議とこのQ2はEVFでのピントの掴みやすさ、フォーカスリングの感触、距離目盛りなどなど、マニュアルフォーカスの楽しさを再認識させてくれます。ホント、ライカ沼にだけはハマらないよう、金銭感覚共に気を付けたいと思っております。(笑)


ついにライカですか、いいなあ。
モトグッチ仲間の一人がフィルムカメラ修理を生業にしているので、彼が応援に出ている中古カメラ市にたまに顔を出します。でも、ライカは高いですよね。ボディよりもレンズの方が高いのには驚きです。それでも飛ぶように売れている方にもっと驚いています。
コメントありがとうございます。
以前のカメラ記事のコメントで「ライカ」と書いて以降、どうにも気になってしまってやってしまいました。モトグッチ乗りのカメラ修理やられている方も、よくフィルム時代のライカの修理について呟いてますよね。今のカメラ本体はデジタルなので時と共に陳腐化しますが、レンズは資産のようなもので、新品時の価格よりも売値が高くついたり、100万円のレンズが納期1年2年待ちとか、スゴイ世界だなとは思います。
そこからするとこのQ2はレンズもついてるのに中古60万円弱でお安い…安くないかw