日に日に日本と世界の情勢が悪化してきており、今年は呑気に山歩きなんぞできるのかな?と不安はありつつも、外出抑制の中でのブログ更新ネタは、昨シーズン後半より使用しているGPSトレッキングナビ&衛星通信端末の「GARMIN inReach MINI」のレビューを書きたいと思います。これ、あんまり詳しい情報無いんでね。

GPSで超有名なGARMINからは、色んなトレッキング用のGPSも出ているのですが、自分はこれまで全く見向きもしてませんでした。理由は簡単で、そんな高価で重い端末持つなら「スマホアプリでいいじゃん」だから。登山を始めて誰もが気になるガジェットではあるGPSナビですが、はっきり言って値段高すぎ。イメージとしてはひと昔前の車のナビみたいなもので、スマホが台頭してきた時代においては完全に過去の遺物だなと思っていました。(使っている人ゴメンナサイ!)
自分は基本は紙の地図を確認しながら山歩きしており、歩いた軌跡はGPSロガーを使って記録していました。ただ、ガスが多く出ていて周りの山も見えない状況下では、現在地の把握に不安になることもあり、その時だけ確認の為にスマホアプリの「FieldAccess」を使っていました。スマホでいいじゃんとは言いましたが、実際はスマホの電波(とGPS)をオンにした状態で山を歩くと、電波状況悪くて一気にバッテリーを食ってしまうので、普段はフライトモードにして、確認の時だけ解除して使用していました。
これで不満は無かったのですが、昨シーズンGPSロガーのログ記録失敗が頻発し、GPSログ取りの端末を替えようといろいろ物色し、考えが二転三転した結果、昨年夏過ぎにinReach MINI(オレンジ)を購入しました。
このinReach MINIという機種は最低限の画面しか無いGPSナビ&トラッキング記録と、イリジウム衛星を介したメッセージ通信が行えるという異色の機能を持ちます。ガーミンの名は付いているものの、このinReachという機器(とサービス)は、DeLorme(デローム)というアメリカの地図会社が出していたもので、数年前にガーミンが買収したものです。故に、これまでのガーミンのGPSナビと違うところが多々あります。

inReachにはExplorer+とこのMINIの2種類あり、Explorer+は他のGPSナビ同様地図画面がありますが、MINIにはまともな地図画面はありません。その代わり、かなりコンパクトで軽量。これが本機の利点。じゃあどう地図の確認するのかというと、スマホとBluetoothで接続し、GARMIN Earthmateというアプリで地図表示して確認します。ガーミンのGPSナビは通常GARMIN Exploreというアプリと連動するのですが、これは前述の経緯の通りDeLormeのアプリを継承しているので、このEarthmateの方を使います。また、衛星通信を介したメッセージングは本体でもできるのですが、ボタンが最小限で入力し難い上に、2バイト文字(要は日本語)が使えません。でも、Earthmateアプリの方で日本語でメッセージのやりとりが可能です。

自分は一番の目的はGPSロガーとしての機能なのですが、仕様書をみるだけでは分からないのが、どれくらいのログが残せるのか?という点。普通はログ軌跡点の最大数とか、メモリ容量とか、参考になる情報があるはずなのですが全く情報なく。海外の掲示板サイトまで探ったのですが、結局不明のままでした。で、実際に2回ほど山で使った限りでは、1秒間隔のログ設定で、だいたい1時間おきの休憩の度にEarthmateアプリと同期して位置確認していって、上り7時間歩いて1泊、夜は充電、山頂を経由して下り8時間歩いて、全てのログが記録できました。あくまで推測なのですが、おそらくスマホアプリと同期する度にログデータをアプリに転送していると思われます。ちなみにスマホアプリのログデータは、GARMIN ExploreのWebサイトにいつのまにかアップロードされています。こっちはExploreなのね。このinReach MINI端末→Earthmateアプリ→Exploreサイトの連携は非常にスムーズです。inReach MINIの充電はAndroidスマホでよく使われるマイクロUSBなので、モバイルバッテリーで充電できます。

ただこのinReach MINI、GPSチップ?がガーミンの他の機種と違うのか、GPS精度は結構悪いです。以前使っていた安いGPSロガーよりも軌跡が微妙に暴れ気味。きっとDeLorme時代のままの中身なのでしょう。また、樹林帯や渓谷など携帯の電波が通じない場所でも、イリジウム衛星回線を介したメッセージをSMSやメールアドレス宛に送れるのですが、スマホのチャットのようにダイレクトにやりとりできるわけでは無く、返信をもらうときはリンク先のinReach専用サイト越しに入力してもらう、という仕様。なので私はこの機能はよほどのことがない限り使わないかな。
このinReach Miniはイリジウム衛星回線を使うため、別途衛星回線契約が必要。この初期登録の時にはちゃんと空の見えるオープンな環境でセットアップする必要があり、単に窓際でやればいいじゃん、と思うとうまくいかなかったりしますので注意。衛星契約は月額固定の年間契約と、月毎にオンオフできる契約があり、自分は春〜秋シーズンしか山に行かないので少しでも節約しようと最初はオンオフプランで申し込みましたが、きっとこのオンオフ手続きをやるのを忘れそうだなと後から思い、すぐ年間契約に切り替えました。個人向け契約の一番安いSafetyの契約で、月額11.95ドル。GPSログ取りと多少のメッセージだけならこれで十分です。1つ注意なのは、うっかり「トラッキング」をオンにしてしまうと、10分おきに衛星通信して現在地の位置情報を送信してしまうので、10分ごとに0.1ドルが課金されてしまいます。1回設定オフにするの忘れていくらか課金されてしまいました。自分の位置をリアルタイムで家族が見れるようにしたい、という方はオンにするのが良いのかもしれませんが、おそらくフツーの人はそんなもの見ないと思います。これはどちらかというとプロ登山の方用の機能かと。
また、衛星通信を介して天気情報を受け取ることもできますが、これも1回1ドルかかります。まあ1ドルくらいいいかと思いますが、天気は常に変化するので、受け取ったタイミングから時間が経つと、結局最新のデータを受け取りたくなります。しかも1回受信するのに結構時間がかかります。休憩時間中に受信して、と思っていても受信中のままで出発することがほとんど。たぶんあまり使わないかなこの機能。

自分は月額11.95ドルもの衛星契約をすることの一番の価値は、いざという時のインタラクティブSOS機能が使えること。これはSOSカバーの下にあるボタンを押すことで、イリジウム衛星を介してGEOSと呼ばれるグローバル監視センターに現在位置とともに通知され、メッセージのやりとりと状況に応じて救援組織に連絡を入れてくれるというサービスです。トレッキングで一番リスクだなと感じるのは、道迷いや、滑落による怪我で動けなくなること。この手の場合は樹林帯などが多く携帯電波も入るか微妙なところなので、非常に心強い機能です。イリジウム衛星回線を使う一番のメリットだし、なかなかこれほどのお守り機能は他にはないかなと。

相変わらず長文になってしまっていますが、inReach MINIには満足しています。色もポップなオレンジで、ザックにぶら下げても軽くて小さいのでうざったくない。製品のコンセプトとしては、基本的にスマホアプリと組み合わせて使ってくれ、ということなのでしょう。最近、ガーミンからはGPSMAP 66Iという同じくイリジウム衛星通信が使える機種が出ましたが、こちらはアプリにExploreを使うので、GPS周りもガーミンのものになってるのかな? 自分には高くて重いから全く欲しいものではないですが、気になってる人には全部入りでよろしいんじゃないでしょうか?